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貴重な文化財を残すために!~石垣の構造をデジタル保存~

2024.12.16

貴重な文化財を残すために!~石垣の構造をデジタル保存~

Technicalnote 技術情報

お世話になっております。キャディアンです。前回の記事では大阪城についてご紹介しました。石垣にクローズアップした内容になっていますが、他にも近代建築的な天守閣や地中から発見された豊臣時代の遺構、様々な施設がある大阪城公園についてもご紹介したかったのですが、一つの記事に収まらなかったので泣く泣く割愛しました。ところで石垣は当時の様子を現代に伝える貴重な資料です。今回の記事では、石垣の保存に関する記事になっています。

文化財としての石垣

史跡や遺跡を訪れると石垣しか残っていないことが多くあります。日本では古来から建築物の上物に木材が多く使われていましたが、落雷や火事で焼失して現代まで残っていることが少ないからです。城に限ると江戸時代初期の一国一城令や明治時代の廃城令によって破壊されたパターンも多く、建築当時の姿が現代まで残っている城はわずか12城しかありません。つまり石垣は当時の経済や社会情勢、技術水準を現代に伝える非常に重要な役割を持っています。

また大阪城の石垣には戦争の傷跡が残されていることをご存じでしょうか?大阪大空襲で投下された爆弾によって石がずれてしまった箇所や機銃掃射の弾痕がたくさん残っている箇所が残っており、戦争の恐ろしさを今に伝えています。

災害などで崩落することも

そんな重要な石垣ですが、木の構造物より残りやすいといっても地震や大雨などの自然災害で崩れてしまうことは少なくありません。崩落すると人や周辺の建築物への被害の他、貴重な史料が失われてしまうことになります。また石垣の周辺に生えている木が成長することによって石垣のバランスを崩し、崩落を招くこともあります。石垣の保全には定期的な補修や耐震性の向上、水害対策といった対応が必要です。



石垣の修復の難しさ

いくら念入りに石垣の保全を行っていても、想定外の大地震や大雨によって崩落してしまうこともあります。しかし崩落した石垣の積み直しは非常に困難な作業になります。工場生産された建築部材と違い、石垣を構成する石はひとつひとつが違った形状をしているからです。石垣を新しく作ったりメンテナンスを専門としている石工職人もいます。安土桃山時代に活躍した石工の集団である穴太衆(あのうしゅう)は、非常に堅牢な石垣を作るとして評判になり、全国の城づくりに大きな影響を与えたとされています。その技を受け継いだ会社が今も滋賀県大津市にありますが、工事の需要の減少などを理由に高度な石積の技術をもつ石工職人が減ってしまいました。石の形状がひとつひとつ違うことや技術者不足などによって、石垣の修復は難易度の高い工事となっています。



石垣の形状をデジタル保存する

崩れてしまった石垣を100%元通りに復元することは不可能に近いですが、それでも崩落前の形状を記録しておくことは修復作業に活用できます。点群データを用いると三次元データとして石垣の形状を保存できます。点群データを用いるメリットですが、

・全体の形状はもちろん、一つ一つの石の形状も全て記録できる。
・勾配を記録できる。
・複数回計測することでデータごとの形状の差異を見ることができる。

といったことが挙げられます。点群データは、地震の前後で石垣の形状にどれくらい変化があったのか把握する、修復作業の計画検討資料などに活用が出来ます。



まとめ

石垣は当時の経済や社会情勢、技術水準を現代に伝える大切な史料です。伝統の技術で作られた石垣には、保全や修復に最新の技術が役立ちます。点群データを用いることで、地震の前後で石垣の形状にどれくらい変化があったのか把握したり、修復作業の計画検討に活用できます。キャディアンでは点群データの計測の他にもデータ処理、モデル作成を一貫して行っています。ご興味がございましたら、ぜひお問い合わせください。

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